ショップモビリティ事務所前で、専従の サマンサさんと。 |
セント・ニコラス・ショッピング・センター |
セント・ニコラス・ショッピング・センター内部 |
(2)調査概要
サットンの総人口は、2000年現在で約176,500人であるが、そのうち、85歳以上の高齢者が約3,800人、身障者が約7,700人となっているという。
1990年6月にスタートしたサットン・ショップモビリティの会員数は、92年まで100人台と低調であった。というのも、開始当初、市当局から無償で提供してもらっていた場所が肝心の商店街からかなり離れたところにあったためである。いわばアクセスのしやすさを売り物にするショップモビリティということからすれば、当然の結果とも言える。
92年10月、サットン・ショップモビリティは現在の事務所に移転した。商店街の中心に位置するセント・ニコラス・ショッピング・センターの3階駐車場に隣接した絶好のロケーションである。これを機に、新規会員数が毎年400人台で推移するようになり、8年後の2000年現在、会員数は3,000人に達している。
サットン・ショップモビリティの事務所におけるヒアリングでは、さまざまな工夫を見ることができたが、特に印象に残ったのは以下の2点である。ちなみに、理事長自身が車椅子を日常的に利用している方であり、当初からショップモビリティの推進に懸命であったこととも大いに関係があると思われる。
利用者の体格の大小や身体機能の程度に合わせて選べるよう、さまざまなタイプの車椅子(電動、手動)や電動スクーター(三輪、四輪)を置いている。また、クッションや膝掛け、車椅子や電動スクーター用の買い物バッグを常備するなど、車椅子利用者の側に立ったきめ細かな配慮をしている。
クッションやひざ掛けなど | |
事務所奥の車庫に様々なタイプのスクーターや車椅子が用意されている |
市当局やショッピング・センターに入居するテナント、協賛企業、あるいは一般市民からさまざまな形で資金や機材などの支援を受けている。しかし、専従者の人件費までは出すことができないため、資金調達に独自の工夫をしている。たとえば、会員や一般市民が寄付した古本を販売したり、「400クラブ」と称する一種の宝くじの企画し、販売したりといったこともしている。ちなみに、英国では宝くじの許可については比較的緩やかであるという。
会員や一般市民が寄付した古本を販売している | |
400クラブの掲示 |
商店街に出てみると、車椅子や電動スクーターが支障なく通行することができるようにしていることがわかる。たとえば、通りや歩道は言うに及ばず、各店舗の入り口から店内に至るまでどこまでもフラットであり、車椅子や電動スクーターに乗ったまま、近隣の市役所や図書館まで行けるようになっている。毎日午前9時30分から午後5時30分まで、いわば歩行者天国にして自転車以外の乗り物の通行を禁止するといった徹底ぶりである(「自転車以外の乗り物の通行禁止」という表示であったが、わが国では車椅子や電動スクーターは歩行者扱いとなるので、当地でもおそらくそのような扱いとなっていると思われる)。
商店街のメインストリート | 商店街の一般店鋪。入り口の間口が 広く、スロープになっている |
自動車進入禁止のゲート | 手前の商店街のメインストリートから奥の市役所・図書館を写す。市役所・図書館の前は自動車道路が通っていて、その下をくぐって電動スクーターで行けるようになっている |
さらに、理事長によれば、商店街のメイン・ストリートは以前、バス通りであったが、ショップモビリティの関係者が市議会議員とともに市当局にねばり強く働きかけた結果、改修することができたという。