産業経済研究要約

柳川市における補助金政策−行政改革と協働の視点から− 世利 洋介
  福岡県柳川市における補助金政策について,従来から一般的に指摘されてきた補助金問題を点検すると共に,行政改革と協働の視点を加え批判的に検討した。本稿では,補助金等審査委員会で提示された個々の事業報告書・成果報告書及び補助金審査チェックシートの分析を元に,次のような事項を明らかにした。一般的な補助金問題に関しては,繰越金問題や二重補助問題など妥当性に疑問が残ること,支部での運用実態が把握されておらず,透明性に欠けていること,上位目的が不鮮明なこと,補助金担当部署間の連携が採られていないこと等。
 更に,行政改革と協働の視点からは,次の諸点を明らかにした。経費削減(経済性の追求)に重点が置かれ,行政評価でいう効率性や有効性(住民欲求の充足あるいは目的に適った手段の整合)の視点は弱かったこと。この財政上の背景として,経常的な義務経費の硬直化への対応が難しい分,補助金を含む補助費等での抑制というインセンティブが働いていたこと。他方で,補助金交付は全庁的に,また多様な分野で展開されていることから,協働を進めるにあたって効果的な手段となり得る,という要素を持ち合わせていること等。

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