産業経済研究要約

欠陥住宅に対する最適責任ルール 境 和彦
  平成17年11月に耐震強度偽装問題が発覚し,建築確認制度が十分に機能していないという現実が浮き彫りになった。その原因の一つとして,建築物の欠陥による損害に対して販売業者(事業者)のみに賠償責任の集中している現行ルールのもとでは,責任を一切負わない民間の検査機関は適正な検査を行うインセンティブをもたないのではないかという問題が指摘されている。そこで,本稿では建築違反により生じた損害に対する賠償責任を,建築物の品質を決定しそれを販売する事業者と,その品質の検査を行う民間の検査機関とでどのように配分することが社会的に望ましいのか理論検証を行う。
 分析の結果,事業者が十分に大きな賠償資力を所有している状況では,現行の事業者への責任集中型のルールは社会的にみて効率的であることが確認される。しかしながら,事業者の賠償資力がある程度小さくなると,検査機関の責任を強化することが社会的費用を減少させることも分かる。すなわち,現行のルールは非効率なものであることが示される。したがって,政府は事業者の賠償資力に合わせた責任ルールを構築する必要があることが本稿の結論として導かれる。

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