産業経済研究要約

幸福のパラドックスと文化経済学の視点 駄田井 正
  「幸福のパラドックス」とは、経済的豊かさと幸福感に相関がないことである。統計的な試みに立ち寄らずに、「幸福のパラドックス」が成立するとして、このことをどう解釈するかを文化経済学の視点から考察する。「文化経済学の基本公式生活の豊かさ=文化力×経済力」から出発することで思考を整理する。「幸福のパラドックス」が生じるのは、経済力が高まることで文化力が低下する場合と、文化力が高まることで経済力が低下する場合である。西欧経済学における「幸福論」についてはユーディノニズムとヘドニズムがある。ユードノニズムでは、富は良き人間関係を築く手段となるが目的ではない。幸福のパラドックスは、富が目的となったとき、あるいは次善の目標として明解に意識されたとき生じる。ヘドニズムに従い、効用が人間関係を除いて富の関数であるとしても、富も多様で、経済財・自由財・公共財・私有財・フロー・ストックなどのバランスが崩れたら経済力が高まったとしても満足度が低下する。また、幸福追求行為について、活動という面から大別すれば、防衛的なものと創造的なものになる。両者のバランスが崩れることも、経済力が高まったとしても満足度が低下することにつながる

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