産業経済研究要約

南朝の清議・郷論 野田 俊昭
  小論は、九品官人法(九品中正制) 運営下における(郷里・郷党の人物評 価としての) 清議・郷論の運用、役割について、主として南朝に焦点を絞っ て考察したものである。その結果は以下のようなものである。@清議・郷論 は全士人を対象とするものであり、庶民以下はその対象からはずれた存在で あった。A士人の家格の決定や改定ということについては、そこに州大中正 の関与、ひいては清議・郷論の関与があるべきであったが、庶民以下のそれ については州大中正の関与、ひいては清議・郷論の関与はなく、皇帝による 許可のみで必要、十分であった。B清議・郷論の適用面から見ても、上級士 人のみならず下級士人も門地二品の存在であった。C庶民出身であっても下 級士人のもつべき家格を得たばあい、それは士人化と連動するとする理解が あったことが推定される。そうすると庶民の士人化ということについても、 そこに清議・郷論の関与が想定される。

Copyright(C)久留米大学経済学部附属産業経済研究所