産業経済研究要約

古典荘園は閉鎖的であった。−サン・ジェルマン・デ・プレ修道院所領の場合1)− 宮松 浩憲
  サン・ジェルマン・デ・プレ修道院の所領は古典荘園と非古典荘園で構成 されていて, 前者は領主の強制力が強く, 荘園外への人とモノの移動は極度 に制約されていた。これに対して, 非古典荘園は賦役労働の強制がないか最 少に抑えられていたことから, 経済的には開放されていた。従って, 修道院 が所領経営において志向したのはすべての荘園の古典荘園化ではなくて, こ れら異なる形態の荘園の効果的な組み合わせであった。修道院はこれら二つ の荘園に, 前者は生産, 後者は流通・運搬という具合に, 役割分担を試みた。 こうして, 人とモノの移動においては大いに制約されていた古典荘園が非古 典荘園との共生関係を維持することによって, この時代の所領は交換経済と 接点を持つことができたのである。

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