産業経済研究要約

少子高齢化を考える: 3 . 地域格差 原田 康平
  2005年国勢調査結果や国立社会保障・人口問題研究所が2002年 1 月および2006年12月に発表した市区町村別人口の将来推計などに基づいて, 少子高齢化の現在と将来の地域格差を検証した。 現在, わが国の人口は第 1 次ベビーブーム世代と第 2 次ベビーブーム世代の突出を特徴としているが, 市町村規模別に年齢構成を見ると, すでに大きい地域格差が生じている。 すなわち, 東京を始めとする大都市に18歳から45歳前後までの人口が集中し, 人口の少ない市町村ほどこの年代の人口が落ち込み, その分, 高齢層が際立って多くなっている。 したがって, 1980年頃から地方から都会への人口流出が激しくなり, 多少の変動はあるものの, その傾向は現在に至るまで変わっていない。 このため, 人口が少ない市町村ほど高齢率が高く, 労働力人口比率が低くなっている。 将来予測人口は, 人口が少ない地域ほど減少し, 高齢化も進む。 この背景には, 18〜45歳という出産適齢期人口が地方で落ち込んでいるゆえに, 人口減少はより加速されるという事情がある。 いうなら, 地方は都会に人口ボーナスを提供する一方で, 自らの人口オーナスにあえがざるを得ない状況におかれている。 福岡県を見た場合, 人口移動は地方⇒福岡市⇒福岡近郊都市という流れが定着しており, 財政面などで地方を支えてきた大都会という構図にも限界が見られる。 今後は若者の流出が止まらず少子高齢化を加速させる地方と, 地方からの人口ボーナスでしばらくは現状維持を続ける大都市および人口を増やす周辺中都市という 2 極化が進むものと考えられる。 地方が生き残るためには, 若者の流出にブレーキをかける雇用環境の整備などが不可欠といえる。

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